2008年1月10日木曜日

今、そこにある危機

中国で初、人から人への感染確認 鳥インフルエンザ
http://www.asahi.com/international/update/0110/TKY200801100321.html
【Asahi.com】 2008年01月10日20時16分

 中国・南京市の父子が鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染した問題について、中国衛生省の報道官は10日の定例会見で、死亡した息子から父親への感染を確認したと発表した。中国で人から人への感染が確認されたのは初めて。ウイルスが「新型」に変異すると大流行する恐れがあるが、「遺伝子の変異はない」としている。

 父親は完治しており、父子と接触があった約80人からは異常が見つかっていないという。ただ、死
亡した息子への感染ルートはまだ確認できていない。報道官は「冬から春にかけて鳥インフルエンザが多発する恐れがあり、予防対策を徹底していく」と述べた。

 オランダやベトナムなどで鳥インフルエンザの人から人への感染が確認されている。ウイルスが人から人への感染力が高い新型インフルエンザになると、世界的に流行する可能性がある。

---------------------------------------------------------------

 世界を襲う恐れのある、最も恐ろしい惨事とは、どんなものでしょうか。

惨事を図るのに、継続的なものや、将来に渡って影響を及ぼすものなど、種類は様々ですが、シンプルに比較するために評価軸を死者数として見ていきたい思います。

まずは自然災害から。

〈地震〉
阪神淡路大震災(1995)       6434名
関東大震災(1923)        105385名(行方不明含む)

〈津波〉
スマトラ島沖地震による津波     22万人
〈火山噴火〉
ネバド・デル・ルイス山 コロンビア(1985)21500名
プレー山 西インド諸島(1902)  32000名

続いて人災。

チェルノブイリ原発事故(1986)    31名(←ソビエト発表)
広島原爆投下(1945)        14万人(~1945/12)
長崎原爆投下(1945)       73884名(~1945/12)
アウシュビッツ(~1945)       100万~400万人
第一次世界大戦         1000万人(行方不明含め、1800万人)
第二次世界大戦         8200万人

と、言われております。


今回、テーマに上げたい疫病についてですが、直近のパンデミックでいうと

スペイン風邪(1918-1919) 4000万~1億人

第二次世界大戦全体の死亡者数に匹敵するくらいの被害がでています。

スペイン風邪といえば、インフルエンザの一種なわけですが、分類で言うとこのスペイン風邪ですら、「弱毒性インフルエンザ」に分類されるそうです。これよりも恐ろしいものが、高病原性鳥インフルエンザ「H5N1」だそうです。

 「H5N1」と呼ばれるインフルエンザウイルスは、現在最もパンデミックに近い病原体と呼ばれ、WHOでは何年も前から注意を呼びかけています。現在、これが大発生すると少ない予測で200万人。一説には億を超える人々が死に至るとされています。

 これが、なぜまだ、大発生にいたらないかというと、一番の障壁となっているのが、種の違いです。鳥インフルエンザは、その名の通り、鳥が罹患するものです。これが鳥に感染しているだけならよかったのですが、ウイルスが進化するにつれ、人間にも罹患し、ウイルスを繁殖させるようになりました。これが鳥→ヒト感染です。

ウイルスの進化は確実にヒトへと向かっていて、鳥→ヒト感染は、感染源となる鳥を隔離(まあ殺してしまうわけですが)で防ぐことができます。1997年の香港での鳥インフルエンザ死者発生の時期には、時の香港行政官が、香港島のすべての鶏の流通を止め、全頭を処分することでパンデミックを防ぐことに成功しました。

 しかし、次の恐怖は鳥インフルエンザのヒト→ヒト感染です。これは全頭処分というわけにはいかず、また、移動手段の多様化により、世界中に多くのヒトが往来するようになった今日、ヒト→ヒト感染が初期段階で隔離できなければ、世界規模でにパンデミックが発生してしまいます。

鳥インフルエンザの恐怖は、元来、人間には感染するはずの無いウイルスのため、免疫がまったくありません。つまり、現在、鳥インフルエンザに有効なワクチンはないわけで(比較的有効というものはありますが)、パンデミックが発生すれば、初期段階で日本の医療制度であっても、崩壊します。

そこで、このニュースなわけです。

ヒト→ヒト感染が確認されたわけですが、問題は、過去も疑わしい症例が中国で確認されているにもかかわらず、ウイルスサンプルを中国政府はWHOに提出しようとしません。ウイルスサンプルがあり、それを研究すれば少しでも早くワクチンを作成することができ、それによりはかりしれない数の人々が助かるかもしれないのに。

こんなところで人類の祭典であるオリンピックを行おうというのですから、狂気の沙汰としか言いようがありません。

日本を始め、世界は、オリンピックを中止にする覚悟で中国側にデータを要求するべきでしょう。
そうでなくても、人命、人権軽視でベルリン五輪以来のプロパガンダである、北京オリンピックなんてボイコットするべきだと思いますが。

P.S. 日本では「タミフル」というインフルエンザの薬が「異常行動を引き起こす恐れがある」というマスコミの煽りを食らって、危険な薬のレッテルを貼られています。 
 もちろん、それは厚生労働省の密室談合主義など、国民に十分な説明をせずに推し進めようとする不作為の大罪があるわけですが、現在、実行性のあるインフルエンザ封じ込め対策の最大のものがこのタミフルの備蓄です。
 品川区では「区民の人命はなんとしても守る」というスローガンのもと、独自のタミフル備蓄に踏み切りました。
 鳥インフルエンザの危険性などは、あまりマスコミも報道しませんが、新聞の記事の大きさ、が国民の優先順位とイコールではありません。タミフルの備蓄および、鳥インフルエンザ対策の重要性をぜひ知らせていきたいと思います。

 パンデミックが起こってからでは対策のしようがありませんから。


参考文献国立感染症研究所http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

「H5N1」岡田春恵著
(国立感染症研究所の研究員の方です。小説仕立てになっています。文章が上手とは思いませんが、鳥インフルエンザの危険性が十分に表現されています。ここには書いていませんが、各国のインフルエンザへの対策と、日本の無策ぶりが書いてあります。ちなみにブッシュ政権下のホワイトハウスのホームページでは、「テロとの戦い」と同列で「鳥インフルエンザ対策」が書いてあるそうです。 )




track feed