2008年1月15日火曜日

耳障りに良い言葉がカンに障る。

「3月末まで成立させない」 ガソリン税で民主・山岡氏http://www.asahi.com/politics/update/0113/TKY200801130147.html?ref=rss
【asahi.com】2008年01月13日21時35分

 民主党の山岡賢次国会対策委員長は13日、大阪府豊能町で講演し、ガソリン税の暫定税率延長を盛り込んだ租税特別措置法案について「何としても(期限の)3月までに成立をさせない。そうすれば、自動的に(ガソリン代が)下がる。下げたものをまた上げるなどと(与党が)言ったら、解散に持ち込んで国民に信を問う」と明言した。

 一方、社民党の日森文尋国対委員長は同日のNHK番組で「暫定税率は廃止する方向で検討し、(党として)そういう結論を出したい」と同調する姿勢を示した。共産党も撤廃の方針で、民主、共産、社民3党の足並みがそろう方向となった。

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 「どんな現実があっても、理想を追い求めるのが『革新』。現実を見据えて、理想を着地させることを一義に考えるのが『保守』」みたいなことを何かで読んだことがあります。

 「安易に妥協しない」とか、「自由や平等、平和といった普遍的な考えをお題目にしない」という意味では、もちろん大切な役割だと思いますし、実際、弱者への目配りという点では、革新勢力というのは大きな意義があるものだと思います。

 しかし、そういう一つ一つの考えが、善意からくるものであっても、それが運動体に堕した時に、なにか汚れたものに感じてしまうのは私だけでしょうか。

 現在の原油高は、庶民の生活を直撃し、これからますます生活が厳しくなっていくことは辛い事ですが、たまたま、参議院第一党になった時期にでてくる問題を端からサボタージュするようなことをする政党が良い政党だとは思えません。

 インド洋の給油しかり、このガソリン税の問題しかり、真正面から議論するのではなく、たな晒しにして、政策を協議すべきカウンターパートに対して、嫌がらせを繰り返しながら、理想を求めていくという手法には疑問を呈さずにはいられません。

 もちろん、密室の中でずぶずぶの妥協を繰り返しながらやってきた、古い自民党への怒りというのもあります。

 しかしながら、税制のあり方という大切な問題を、一時の人気取りのために利用されるのは気持ちの良いものではありません。ここで一気に減税を行えば、プライマリーバランスの均衡は先送りになり、結局我々の世代や、次の世代が重荷を背負うことになります。

 ことガソリン税を問題にするのであれば、安倍晋三が道筋をつけようとしていた一般財源化をなぜ見殺しにしたのか。

 年金と同じで、今の生活も大事ですが、「将来に渡っての安心」というものが保障されないのであれば、明るい希望ある社会の実現が託せるわけがありません。

産経新聞の岩崎慶市氏がキレの良い評論を書いていたので、長いのですが、引用させてもらいます。

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【岩崎慶市のけいざい独言】「25円値下げ」という甘言http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080114/biz0801141205001-n1.htm

 予想されたこととはいえ、今年度末に期限がくる道路特定財源の暫定税率をめぐる与野党の議論には半ばあきれてしまう。折からの原油高騰も利用して、まるで人気取り競争のようだ。

 「ガソリンは暫定税率廃止で1リットル当たり約25円安くなります」

 仕掛けるのは参院第1党の民主党である。原油が一時、1バレル=100ドルの声を聞き、ガソリンが1リットル=150円前後まで値上がりしたとあって、一部マスコミまでがこれを煽(あお)る。そして18日開会のねじれ通常国会で大きな焦点となった。

 ガソリンにかかる揮発油税や自動車重量税などの暫定税率は本来の税率の倍だから、これを廃止すれば民主党のいう通りになる。だが、問題はそう簡単ではあるまい。

 そもそも道路特定財源問題は一般財源化に端を発する。国・地方合わせて5・6兆円に上る財源を一般財源化すれば、無駄な道路建設を防ぎ財政再建にも役立つからだ。一部を環境税に組み替えることだってできる。

 遺憾ながら政府・与党の来年度税制改正案は暫定税率は維持したものの、一般財源化は完全に有名無実化した。悲しいことに、民主党案はこれに輪をかけてひどい。

 全額一般財源化するとしながら、指摘したように暫定税率は廃止する。減税額は2・7兆円に上るのに、財源の手当てはない。このまま国会で激突したらどうなるのか。

 予算案は衆院で可決すれば年度内に自然成立するが、租税特別措置法改正案は別だ。参院で店(たな)ざらしになると、新年度の歳入に不足が生じ予算執行に支障が出る。衆院で再議決するにしても、一旦(いったん)はガソリンが下がるから混乱は必至だ。

 民主党の狙いはそこだろう。あきらかに総選挙を意識した戦術である。自民も自民で「暫定税率を廃止したら地方の道路予算が9000億円不足する」と、選挙向けの発言を繰り返す。

 この論戦からは、一般財源化の意義のかけらも見いだせない。そして、税が高いと文句をいうドライバー諸氏にも少し物申しておきたい。

 揮発油税は昨年第1四半期現在で、完全な車社会の米国よりは高いが、英、独、仏の半分程度である。さらに欧州は付加価値税が高率だから、ガソリンは日本よりはるかに高くなる。

 大体が25円値下がりしたところで家計にどれほどのプラスなのか。目先の甘言に飛びつき、別の大型増税と混乱を誘発したら、元も子もあるまいに。
(論説副委員長)



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