2008年5月7日水曜日

パンドラの箱にまだ「希望」は残っているか

硫化水素による自殺が増えたのはマスコミのせい
【Livedoorニュース】2008年05月06日20時20分http://news.livedoor.com/article/detail/3627041/

 硫化水素による自殺が増えたのはインターネットのせい、とマスコミが声高に言っているので、インターネット側としても声をあげたいと思います。硫化水素による自殺が増えたのはマスコミのせいです。
 インターネット上に自殺方法が書かれているのは事実です。特定の成分が含まれている薬剤を混ぜ合わせると硫化水素が発生し、致死量を吸引すると死にます。ただ、それだけのことです。


 理解して欲しいのはこれがただの情報であるということです。人は首を吊れば死にます。高いところから飛び降りれば死にます。致死量の薬を飲めば死にます。すべては単なる情報です。自殺を誘因するものではありません。

 死にたいと思っている人は自殺の方法を探します。それらは前述のように首吊りだったり、飛び降りだったり、電車への飛び込みだったり、方法は様々です。その中の一つが、硫化水素です。

 硫化水素で自殺しよう!なんて思いつく人はまずいません。自殺で一番に思いつくのは首吊りだからです。なぜか?それは一番身近なモノだからです。

 首吊りで自殺することが身近というわけじゃありません。玄関あけたら目の前に死体、なんていう状況は勘弁して欲しいものです。ではなぜ一番身近なのでしょうか?首吊り、よくやってるじゃないですか、テレビで。

 日本における自殺の方法第1位は首吊りです。男女ともに過半数を超える支持を獲得しています。なぜこんなにも首吊りが好まれるのでしょうか?

 痛くないから。すぐに気を失うから。死体がキレイだから。諸説いろいろとありますが、自殺した(が失敗した)人の話によると飛び降りだって全く痛くなくて気持ち良いそうです。腰から落ちればキレイに死ねます。薬もそうです。それでも、首吊りが第1位です。

 理由は簡単です。みんなやっているから。成功したことがない方法を試そうという自殺志願者はいません。中には自分で考え抜いた珍しい方法で挑戦する人もいますが、ごくごく少数です。みんなが死んだ方法だから、自分もするんです。

 ではそのみんなとは一体誰なのか?日本はよくできた国で、公園で首を吊ってもすぐに国家が片付けてくれます。普段生きている限りあまり目にしません。ではどこで目にするかというと、それがテレビなんです。

 ドラマ、時代劇、映画、なんでもかまいませんが、1日に1回はどこかのテレビでやってます、自殺。もちろん演出ですが、見ている人にとって自殺には代わりありません。遺書を書いて、最後に覚悟をして、ぶらーん。

 硫化水素もこれと同じです。自殺したいと考えている人のところに、「○○さんが硫化水素で自殺しました」「××さんもしました」「△△さんもしました」という自殺成功情報が飛び込んできて、「いずれもインターネットに掲載されていた情報をもとに自殺したそうです」と言われたらYahoo!の検索窓に打ち込んでしまいますよ、「硫化水素 自殺 方法」と。

 もちろん硫化水素は自分だけではなく周りを巻き込むおそれもあるため、第三者に知らせるということは必要です。ですが、わざわざ「硫化水素」「インターネットに掲載されていた情報」と言わなくても良いのです。

 マスコミが第三者に知らせたいのであれば、「○○さんが特殊な方法で有毒ガスを発生させて自殺しました。このガスは大変危険ですので、卵の腐ったようなにおいがする場合は、ただちにそこから離れて警察に通報して下さい。また、自殺を考えている方は一度誰かに相談うんぬん」とでも流せば良いのです。

 それをおもしろ半分に「硫化水素で自殺した」「情報はインターネット」などと書いてあるから、硫化水素による自殺が増えることになります。マスコミは、硫化水素による自殺を扇動していることに他なりません。

 残念なことは、私がこのように声をあげても世間一般の人は「硫化水素による自殺はインターネットのせい」だと思い続けることです。それぐらい、テレビという情報媒体は強力なものです。おそらくインターネット全体で「硫化水素による自殺はマスコミのせい」と言っても結果は変わらないでしょう。

 それでも私は声をあげます。それはマスコミに対してではなく、自殺しようとしている人に対してです。死にたいなら今すぐ縄を用意して下さい。首つりはドアノブ程度の高さでも死ねます。信じられないでしょうが頭部の体重が首にかかれば人間死ぬのです。

 理解できましたか?あなたは縄さえあればいつでも死ねます。だから、もうちょっとだけ生きてみませんか?学校でいじめられていても、そんなのは人生の10分の1にもなりません。借金?今の生活捨ててみて下さい。しがみつこうとするから悩むんです。あなたはいつでも死ねます、それならもうちょっと生きてみるのも良いと私は思います。私も、自殺を考えたことがある人間です。

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硫化水素を巡る報道については、日本のマスコミの、本当に無責任で愚かな姿勢が表れ続けていて、嫌な気持ちになります。

「硫化水素の発生法に簡単にアクセスできてしまうのがけしからん」という論調がマスコミ全体に漂っていて、例によって、「ネット社会の台頭によって、これまでに起こりえなかった危機が起こり、これまでの平和な社会が破壊される」みたいな空気を漂わせようとしてるように見えます。

しかし、この記事にあるように硫化水素があろうがなかろうが、自殺者は一定数いるわけで、むしろ従来の自殺(首吊りや身投げ)はあまり大きく報道しなかったのに、自殺サイトを皮切りに、今回の硫化水素のように「新しいパターンの自殺をする人が増えた」ということがこの一連の報道の真のニュース性なわけです。

このことをよりわかりやすくするために違ったケースについて書くと、近年、若者の自殺が増えているようなことが問題視されますが、実際には若者の自殺は横ばいで、増加傾向は見られません。自殺者の数も、どの年代よりも少ないことがわかります。 (厚生労働省 自殺死亡統計の概況)
では、ワイドショーやら、報道番組もどきでやっていることは一体なんなんでしょう。犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛んだらニュースになるよ、というだけのことなのです。

では、仮に「硫化水素」を有害情報に指定して硫化水素による自殺を押さえ込もうとしたならどうなるか。自殺したい人にしてみれば、自殺したくなるような環境はそのままにただ「死ぬな」と言っているだけなので、なんの解決も示していません。自殺したい人は別の手段で自殺するだけ。これでは「自殺したい人が硫化水素で自殺すること」を減らすことができても、「自殺したい人が自殺すること」を減らすことにはならないと思います。これで本当に問題解決なのですか。

自殺の背景にはいろいろなことがあると思います。例えば「好きな女の子に振られて悲しい」のも立派な自殺理由だと思います。しかし、一番多い理由は、現在の経済状態であったり、経済状態の先行きなどが非常に多いのではないかと思います。

実際に、それを示すニュースは溢れているではないですか。原油高や食料原材料不足による物価高、漂流する日雇い派遣、年金の崩壊、少子高齢化、晩婚化、一昔前だったら、生涯雇用の崩壊が問題になっていましたが、現在では、正規雇用の枠に入れるかどうか、セーフティネットの中に踏みとどまれるかが問題となっています。

こんな状況で、逃げ切りを図る上の世代から、「死ぬのは良くない」と倫理をふりかざされても、一体何を拠り所にして希望を見出していけばよいのか。ふざけるな!です。

本当は、硫化水素に端を発する「群発自殺」についてのマスコミの姿勢についても書きたかったのですが、今日はこの辺で。



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2008年5月3日土曜日

11番ホームの妖精


θ―11番ホームの妖精 (電撃文庫 と 10-1) (文庫) 籘真 千歳 (著)




東京駅上空2200mに浮かぶホームには、銀の髪と瑠璃色の瞳を持つ少女と白い狼が住んでいる。彼らは忘れ去られた約束を信じて、今日もその場所で待っている。―high Compress Dimension transport(高密度次元圧縮交通)―通称C.D.「鏡色の門」と鋼鉄の線路により、地球の裏側までわずか数時間で結ばれる時代。春の隠やかな午後、東京駅11番ホームに響き渡る突然のエマージェンシーコールが事件の始まりを告げた…。銀色の髪の少女T・B、野菜嫌いの娘・義経、そしてクールなAI、アリスが繰り広げる、ハードSF&のほほんストーリー。(以上、本書見返しより)


読み始めた時は、主人公"TB"と"義経(狼)"のやり取りが馴れ合いみたいに見えたのですが、何気ないやり取りを通じて、段々と作りこまれた世界観が明らかになってくると、軽い語り口がリズムを生み、一気に読むことができました。


時代背景や小道具が非常に凝っていて、スケールの大きい世界観を感じさせるのですが、それぞれのキャラクターが特徴的で、良くも悪くもドタバタとストーリーが進んでいく感じなので、ちょっと時間があるときに、気軽に手を伸ばせる作品です。


ただのSFではなく、現実世界のメタファー的な部分も多いので、図書館戦争のような感じで続巻していってほしいです。


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友人が本を出しました。会社員時代からコツコツ書き溜めて、いろんな賞に応募していたのですが、ある小さな(といっては失礼か)賞を受賞するのを契機に、会社を退職し、本格的に創作活動に入りました。


最初はより大きな賞に応募したり、出版社に持ち込んだりしていたようですが、その努力が実ってか、今回の出版に至ったようです。


「メディア・ワークス」という名の通った出版社からの出版ということで、「大した物だ」とビックリして買いに行きましたが、行く本屋、行く本屋でちっとも置いてなくて、さらにビックリ。せっかく出版に至っても、取次ぎが配本してくれるかどうか、というもうひとつの戦いがあるのですね。知ってはいましたが、改めて出版界の熾烈な競争を目の当たりにしました。


新宿のジュンク堂で手にいれました。


内容は表紙の通り、ライトノベル100%です。あまりライトノベルは読まないので、セリフ回しなど、読んでいてはずかしくなるような表現も多いのですが、物語としての完成度は高く、一つ一つのネタが生きていて、SFとしてもなかなか面白く読めました。


「これがコケたら崖っぷちです。」と言ってましたが、なんとか踏ん張ってもらいたいところです。


印税でおごってもらう約束なので、ぜひ皆さん、買ってください。


以上、宣伝でした。







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