2008年1月4日金曜日

頼りない男か、信用できない男か

杉村太蔵氏擁立せず 地元自民など決定 北海道1区 2007年12月27日11時35分

 次期衆院選の北海道1区(札幌市中央区など)の公認候補者を選考していた自民党道連や地元経済界は27日、杉村太蔵衆院議員(28)=比例区南関東ブロック=を擁立せず、「YOSAKOIソーラン祭り」創始者の長谷川岳氏(36)を推すことを決めた。杉村氏は05年の郵政解散に伴う総選挙で大量当選した「小泉チルドレン」の1人で、地元の北海道から立候補したいと訴えていた。杉村氏は「どうあろうと北海道1区から出る」と公言しており、分裂選挙になる可能性も出てきた。
 この日、道議らで構成する選考委が札幌市内で開かれ、全会一致で長谷川氏を党本部に推薦することを決めた。
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 杉村氏は「公認するかしないかは党の判断。選挙に出馬するかしないかは私の判断」と述べ、公認の有無にかかわらず出馬する考えを示している。
 道連会長の今津寛衆院議員は「政治家として決まったことに従う努力をしてもらいたい」と話した。


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1、小泉チルドレンと呼ばれる83人の衆議院議員がいる。郵政選挙と呼ばれたこの選挙の是非はさておき、小泉劇場と呼ばれた劇場型政治の象徴的存在であったことは間違いない。
「自民党をぶっ壊す」「改革を止めるな」というスローガンの裏にある既得権益の開放と、密室談合的に決定していくこの国の意思決定システムに対する反発であり、そのようなスローガンにフィットしていたのが、彼らのように、政治に密着していたわけではない、いわゆるしがらみの無い彼らの存在であり、彼らを応援することが新しい風となり、風通しの良い国にしてくれるのではないかという期待である。小泉チルドレン達は、当時の武部幹事長を後ろ盾とし、83会を結成。郵政3法案も無事、国会を通過した。


2、望まれる政治家像についての議論にこういうものがある。

「力はあるが、クリーンでない政治家」
「力はないが、クリーンな政治家」
のどちらが良いかというものである。

 時の郵政選挙においては、ここの選挙区は別にして、民意はクリーンな政治家を選んだ。それが小泉チルドレンであった。
 前回の参議院選においての民主党の躍進についても同じことが言えるだろう。

 しかるに、クリーンというのは金品や物品だけのことではない。特定の団体に偏った便宜を図ったりする人物でないかどうか。これはもちろん所属の政党も含まれる。党の重役の顔色を伺うだけでは国民の代表である必要はない。クリーンというのは偏り無くわれわれ国民の声に耳を傾け、われわれの声を国政の場で代弁してくれる人物かどうかがクリーンな政治家の本義である。


3、「疾風に勁草を知る」というが、混沌は昨年の秋からだ。小泉首相の後継であり、当然引き続き後ろ盾になると思っていた阿部首相が辞任し、右派から左派へ、改革路線から、古い自民党への先祖返りへ、と政局は大きく転換する。福田対麻生の総裁選は混迷を極めた。
 やれ小泉新党だとか、チルドレンで民主党に合流だとか、内輪でウジウジとやっているうちに、なし崩し的に福田総裁誕生。当然選挙の公認人事は白紙になった。
 ねじれ国会で政局が膠着する中、心中は国会審議などではなく、次の選挙の党の方針に戦々恐々という感じだろう。 国民の声を聞いて政治をするのではなく、党上層部の声を気にしてウジウジ議員活動をする姿を見て、国民の目には何が映るのだろうか。
 「抵抗勢力にぶっ壊される改革勢力」であるのなら歴史にも残るだろうが、今のままでは古い政治のパワーゲームにしか見えない。

 求められているのは、権力ではなく、しがらみにとらわれずに、おかしいと思ったことはおかしいといえるクリーンな感覚を政治の場で発揮してもらうことである。問題提起があって、国民にその声が届けば、いかにしがらみがあっても、力ある政治家が必ず後押しをしてくれる。
(C型肝炎訴訟問題などそのよい例である。)
まだ力がないから、力がある政治家に「右に倣え」をしているというのであれば、国民の代表である必要はないのである。


4、その意味で、杉村太蔵議員は、ある意味期待とおりの活躍をしている。他のチルドレンが83会でのほほんとしている間にも、後ろ盾である武部幹事長と袂を分かち、総裁選においても、周りが派閥の論理に取り込まれていく中、堂々と麻生を支持し、ほかのチルドレンが「公認してくれなかったらどうしよう」なんて言っている間に、早々に北海道1区からの出馬を表明した。

「公認するかしないかは党の判断。選挙に出馬するかしないかは私の判断」

は他のチルドレンの態度に比べるといかにも重みを感じる。ちなみに北海道1区は反自民色が強く、自民党議員がもっとも嫌う選挙区であり、小選挙区制導入後の1996年以来、民主党の横路孝弘氏がいずれの選挙でも圧勝している。いわば、杉村議員にとっても背水の陣であることは間違いない。杉村議員の狙いは、もし別の候補を擁立すれば、自民票が食い合いになって、また横路にとられるぞ。という恫喝だったが、これは残念ながら失敗してしまった。

 ただし、糸の切れた凧は高く舞い上がる。反自民の選挙区において、古い自民党から放逐された杉村氏にとっては、これで自民の長谷川対反自民の横路・杉村という戦いになり、両陣営の浮動票が見込める。また、鈴木宗雄氏の新党大地に選挙協力を要請するという目もある。いずれにせよ、簡単に組織の論理に飲み込まれて終わってしまう選挙など面白くもなんともない。

「杉村はバカだから投票するな」「経験のない若造はなにもできない」という意見が今のところ大勢のようだが、組織を向こうにまわして選挙やっている国会議員がどれだけいるか。


最後に、日本国の民主主義の礎である、明治天皇がお示しされた「五箇条の御誓文」の二番目にはこう書いてある。

"上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし。"

地位や身分にかかわらず、様々な立場の代表が、心を一つにして話し合うのが国権の最高機関たる国会である。


だから、バカにはバカの意見があるんだ。バカの代表して何が悪い。


ニートやフリーター問題に心情的に最も近い議員が杉村議員だと思う。選挙に勝って、力をつけてがんばってほしい。


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