【おくやみ】
河林満氏死去 作家
中日新聞2008年1月21日 11時57分
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008012101000261.html
河林 満氏(かわばやし・みつる=作家)19日午後5時38分、脳出血のため東京都文京区の病院で死去、57歳。福島県出身。自宅は東京都昭島市拝島町3の10の5の708。葬儀・告別式は23日午前11時から東京都日野市日野本町3の6の19、宝泉寺会館で。喪主は妻幸恵(さちえ)さん。
90年「渇水」で文学界新人賞受賞。同作のほか、「穀雨」でも芥川賞候補になった。
(共同)
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私は今、通夜に参列するために、日野駅近くで時間をつぶしている。
河林先生との出会いは約1年前。
先週も、先生の行きつけの蕎麦屋で一杯やったばかりだった。その時は健康そのもの、無理にみんなをもう一軒つきあわせて、文学を肴に熱く語ったものだった。
先生の代表作である「渇水」は水道局員の話。文學界新人賞を受賞し、芥川賞の候補にもなった。
「水道料金未払い家庭の水道を止める」というのが仕事の主人公。退屈ともいえる日常の姿だが、そこに射す死の影と、急展開するストーリーにより、読むものに訴える。
日常と非日常は隣り合わせなのだと。
無骨で、がさつで、酒飲みの先生は、いつも文学を語り続ける。時に厚かましく、時に押しつけがましいその姿は、文学に真っ正面からぶつかり、すべての世界を、文学の文脈を通してのみ知覚する先生の、人間としての優しさの現れだった。
熱っぽくて熱い。そして温かい先生は、その生き方を貫き通した。
ドイツの宗教学者、ルターは言う。
死は、一生の終わりではない。生涯の完成なのだ、と。
急逝した先生は、何を完成させたのか。
先生は何かを完成させた。
そして、その意味を考えるのは、残された私たちなのだと、勝手に思う。
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