2008年2月22日金曜日

深い闇


「道路造れ」特定財源でミュージカル 劇団も困惑気味



 使い道が限られているはずの道路特定財源がミュージカルに使われていた。国土交通省の委託を受けて制作・上演していたのは「劇団ふるさときゃらばん」。冬柴国交相が国会で「やめる」と言って注目を集めたが、道路整備の啓発ミュージカルって、どんな筋立てなのか。劇団側は今、どう感じているのか。


 作業着姿でツルハシをふるう人たちが、晴れ晴れとした表情で高らかに合唱する――。
 「道路を造れ。道路を造れ。おれたちみんなの生きる道だ。車の走れる道路を造れ。日本の明日をつくる道だ」


 国交省の委託で「劇団ふるさときゃらばん」が制作したミュージカルは「みちぶしん」という題だ。映像と脚本を入手し、鑑賞してみた。


 縄文期から現代へと時をめぐりながら、人と道のかかわりの物語をオムニバス風につづる。
 97年開通の長野・岐阜県境の安房トンネルの工事場面では、熱湯が噴き出す厳しい現場を描写。弱音を漏らす作業員に向かって現場監督が言う。


 「トンネルが通らなかったら、山に囲まれた地域は発展できない。日本中の山里は過疎で人がいなくなってしまう」


 雪深い集落を舞台にした物語では、道路に不満を持つ住民らが、多忙を極める市の土木課職員の姿に感嘆する。役所に頼ってはいけないと、自分たちで峠の草木を切り、峠の眺望を取り戻す。
 そして、フィナーレの歌。「山川を越え、暮らしをつなぐ。道は大地のパーツ」「道路走って世界を開く。道路は新しい時代をつくる」――。


 同劇団は東京都小金井市を拠点に83年に結成。日本の風土に根ざした創作ミュージカルの旅公演で知られ、47都道府県の計1100を超す市町村で上演してきた。サラリーマンの哀感を描いた作品は代表作の一つ。今は消防団の活躍を描いた作品を上演中。文化庁芸術祭賞も受賞している。
 脚本・演出の石塚克彦さん(70)は「道路特定財源を使っているとは知らなかった」と、今回の騒動に困惑気味だ。「我々は崩壊する地域社会の再生というテーマに力を入れてきた。地域にとっての公共性とは何かという問題につながるという意味で、国交省と問題意識を共有できたので引き受けた」


 国交省から「元々、おらが村の道路をみんなで造るのが公共工事だったが、地域社会と公共工事が離れすぎた。この関係を問い直したい」といった説明を受けたという。


 地元青年団などを巻き込み地域密着の公演をしてきた。石塚さんも地域で取材して脚本を書く。「みちぶしん」も、地域を歩いて感動した話をもとに作ったといい、「内容について国交省の注文は受けていない」。ただ、その制作費は国交省から得ている。入場料は無料とされた。


 制作を委託した国交省の狙いは何だったのか。国交省の中部・近畿両地方整備局が01年ごろ、道路整備の啓発活動「未知普請(みちぶしん)」を開始。舞台はその一環だった。


 費用は、道路特定財源を主な原資とする道路整備特別会計から支出。主に両地方整備局管内の各国道事務所などが劇団と随意契約を交わした。


 随意契約理由書では、この劇団名をあげて「『公共と地域』をテーマにしたミュージカルを数多く手がけ、本業務の遂行に能力を有する唯一の社」と明記。同省の資料には「情報があふれる現代社会は、楽しみの中に正論を忍ばせる工夫も重要」と記されている。


 道路特定財源は道路整備を目的に、ガソリン税などでドライバーらに負担させている。


 「道路特会の支出で、無駄もあったんじゃないんですか」


 14日の衆院予算委員会で保坂展人氏(社民)がこう指摘すると、冬柴国交相は「(支出が)過大という評価であれば、やめさせます」と答弁。


 冬柴氏は21日の衆院本会議では、上演回数が95回に上り、総額5億7000万円を支出していたことを明らかにし、「一切行わないことを決めました」と強調した。


 未知普請を発案した同省幹部は「活動の狙い自体は間違っていないと確信しているが、あんなに頻繁にやる必要はなかった」と話す。


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 道路行政の啓発ミュージカルと聞いて、どんな馬鹿げた代物かと思いましたが、こんなストーリーのようです。




-道は獣道から始まった-
道のはじまりは、はるか昔。動物たちが歩いた跡、獣道にさかのぼる。三ヶ岳のふもと、トンガリ村の人々は狩りをし、木の実や山菜をとってくらしていた。近くの峠では刃物となる黒曜石がとれる。それを目当てに、遠く海の村から物々交換にやってくる海の人・カイ。山の若者・タケトはカイの海の話に心を躍らせ、「海が見たい」一心で、はるか遠く海の村へと旅をする。若者・タケトの冒険がはじまる。

-文明の夜明け-
中世、人々のくらしは獣たちと隣りあわせだった。桔梗ヶ原(ききょうがはら)に鉄路がしかれ、狐たちの縄張りをわがもの顔で縦断する蒸気機関車が出現。誇りを傷つけられた狐の大将・玄蕃之丞は、蒸気機関車に戦いを挑む。人と獣が同じ世界にくらし呼吸していた時代が鮮烈な詩情で描かれる。そして旅と言えば徒歩や早篭、人力車だったのがスピードを求めて、自転車に乗ろうとズボンをはき、馬が歩く道にはバスが乗り入れ、ガタゴトとにぎやかに走ってゆく。戦後まで日本の道路は、江戸時代のまま。クルマが走れる道路をつくり、自家用車に乗ることが日本人の夢となり望みとなる。道路づくりは国の復興をかけて急ピッチで進められた。

-くらしと道、そして未来へつながる
山あり谷ありの日本ではすんなり道路はつくれない、トンネルを掘らねばならなかった。冬から春にかけて半年間、通行不能となる安房(あぼう)峠では、18年におよぶ熱と水とのたたかいの末、安房トンネルを完成させた。あまりにも当たり前に道路が走る現代。新しい時代に向けて、道路と人間の新しいコミュニティづくりが求められ、豊かなふるさとへのメッセージがうたいあげられる。





そんでもって、サイトで紹介されている反響がこんな感じ


みんなの息があっていたのが不思議ですごかった。ジャンプした時いたくなかったか不思議に思った。ブルトーザーかショベルカーなどの役をやっている人はすごい筋肉だなと思った。(男・中学2年)


道の大切さを当たり前に思っている。道はたくさんの人の手によって出来ているとわかった。道を大切にするにはゴミを捨てないことから道路がキレイになっている。道をつくった人の苦労ほどでは無いけれど、ゴミを捨てないことからはじめようと思いました。(女・小学5年)


みちのことをみていろいろなものがわかってうれしかったです。次やるときもみたいです。すごくよかったです。もっとみたかったです。すごく楽しかったです。(女・小学4年)


道がくらしとかかわっているんだなあと、ひじょうにおもいました。おもしろかったです。(男・小学3年)


みちはこんなにすてきなんだと、おもった。みちをたいせつにしないといけないんだなとおもった。(女・小学2年)





 みごとに道路整備の意義が、幼い子供たちにも啓発されていて、さすが国土交通省という感じですね。


 この「劇団ふるさときゃらばん」というところは、佐藤江梨子の姉も所属しているらしく、劇団としての体裁は整っているおうです、この演出家のインタビューを見る限りでも、「国交省との口裏合わせはちゃんとできてます」みたいなものを感じてしまいます。


 入場料無料で公演を行っている時点で、なんかしらのヒモがついているのは明らかじゃないですか。


 猪瀬直樹の著書に出てきますが、省庁の周りにある、財団法人というのも問題ですが、その財団法人が隠れ蓑に使っているこういう団体にまでメスを入れていかなくてはいけない、この国の利権構造の深さに恐ろしさを感じます。







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