2008年2月4日月曜日

死者の声に耳を傾ける

再鑑定も外傷性ショック 力士急死事件、捜査大詰め

【asahi.com】2008年02月04日15時00分

http://www.asahi.com/national/update/0204/NGY200802040002.html


 大相撲・時津風部屋の序ノ口力士斉藤俊さん(当時17)=しこ名・時太山=が昨年の名古屋場所前の6月、愛知県犬山市でけいこ後に急死した事件で、死因を再鑑定した名古屋大が「多発外傷による外傷性ショック」との結論を県警に伝えていたことが4日、わかった。当時の時津風親方=元小結双津竜、本名・山本順一(57)=と兄弟子による暴行が死に結びついたことを改めて裏付ける内容で、傷害致死容疑での強制捜査に向けて最終局面に入った。


 調べでは、昨年6月25日、部屋を脱走した斉藤さんに昼ごろから兄弟子が暴行。さらに、前親方が夕食の席で額をビール瓶で殴ったのをきっかけに兄弟子3人が宿舎裏などで殴る、けるの暴行を加えたとされる。翌26日も兄弟子4人が土俵上でぶつかりげいこの名目で暴行したとされる。


 最初の新潟大も「外傷性ショック死」と鑑定していたが、死亡前日と当日に受けた暴行のいずれが死に結びついたかが特定されなかった。このため県警は昨年11月、死因について名大に再鑑定を依頼していた。


 県警は、遺体の血液から致死量のカリウムが検出されていたことに注目。筋肉が強い衝撃を受けると血中へ流出、一定時間を経て心停止を引き起こすとされる。半日以上経過した内出血が多かったこととあわせ、県警は死亡前日の暴行が死を引き起こした可能性が高いとみていた。名大の再鑑定でもこの見方を裏付ける結果が出た模様だ。


 県警は26日の暴行もけいこの範囲を超えており、追い打ちになったとみている。一連の暴行に加わった前親方と兄弟子らは関与の度合いに濃淡があり、県警は強制捜査とする範囲を名古屋地検と最終協議している。


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 まもなく上映開始となる「チームバチスタの栄光」。著者であり、医師である海堂尊氏は、死亡時医学検索の重要性を一貫したテーマとして、その著書の中で訴えつづけています。


 監察医制度が大都市にしく、死亡しても解剖されるケースは非常にまれです。


 今回の時津風部屋の事件は悪質なにおいがしますが、通常では、多少不審な点があっても、解剖せずに済ませてしまうことが多いようです。


 犯罪によって死亡した被害者の捜査のための解剖というのも重要ですが、通常のいわゆる病死であっても、医学の発展のためには時として、解剖が必要なケースもあるのではないか、と素人ながらに想像しますが、地方自治体のうち、半数が解剖のための予算が100万以下で、山口県に至っては予算ゼロだそうです。


 海堂尊氏は、解剖を今より積極的に行っていくことを求める一方で、AI(オートプシー・イメージング)というMRIやレントゲンをフル活用した検索手段を義務付けるべきだ、と主張しています。


 遺体を損壊する解剖を厭う遺族がいるのはもちろんだと思いますが、もう少しうまく折り合いをつける手段を模索していかないと、遺族にとっても、大切な人がなぜ死んだのかわからない、というのも不幸なことだと思います。


 具体的な実態は、海堂尊氏の「死因不明社会」をお勧めします。また、死体の発見から検死、解剖にいたるまでの解剖行政の矛盾を面白く描いた短編が「このミステリーがすごい2008」に掲載されています。


 興味がある方に、ぜひオススメします。




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