2008年4月1日火曜日

圧力に左右、不適切

官房長官「圧力に左右、不適切」 「靖国」上映中止で
【asahi.com】2008/4/1
http://www.asahi.com/culture/update/0401/TKY200804010335.html

 中国人監督が撮ったドキュメンタリー映画「靖国」の上映中止問題で、町村官房長官は1日の記者会見で「いろんな嫌がらせや圧力で表現の自由が左右されるのは不適切だ」と述べた。自民党の稲田朋美衆院議員側が公的助成金が出ていることを疑問視し、文化庁に問い合わせたことが発端になったとの指摘については「稲田さんは言論の自由はしっかり守られるべきだとも述べており、そのことが上映中止につながったとは考えない」と否定した。

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 昨日のエントリで、「靖国」の上映にまつわる雑観を書きましたが、映画館側が足並み揃えて上映を中止するとは思いませんでした。朝日の別の記事では、マスコミを中心とした労組団体が声明を出したことを伝えています。

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マスコミ関連労組、相次ぎ抗議声明 「靖国」上映中止でhttp://www.asahi.com/culture/update/0401/TKY200804010393.html

映画「靖国 YASUKUNI」をめぐり、トラブルを警戒して公開予定の12日からの上映が中止された問題で、映画・演劇をはじめとするマスコミ業界の労組が1日、相次いで声明を出した。

 新聞労連など9団体でつくる日本マスコミ文化情報労組会議(嵯峨仁朗議長)は「日本映画史上かつてない、映画の表現の自由が侵された重大事態。政治的圧力、文化支援への政治介入、上映圧殺に強く抗議する」などと訴えた。

 映画館関係者らでつくる映画演劇労働組合連合会(映演労連、高橋邦夫中央執行委員長)も声明で、「すべての映画各社、映画館、映画関係者は公開の場を提供するよう、映画人としての勇気と気概を発揮して欲しい」と呼びかけた。

 「靖国」をめぐっては、自民党の稲田朋美衆院議員側が製作に公的助成金が出たことを疑問視。国会議員向け試写会が3月12日に開かれた。その後、公開予定の映画館に街宣車が来るなどし、12日封切り予定だった5館すべてが上映中止を決めた。

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この声明では、「政治的圧力、文化支援への政治介入、上映圧殺に強く抗議する」と、政治責任を訴えているわけですが、稲田議員の試写会を開く過程や、その後の議論がどの程度、強権的なもので、圧力というにふさわしいものだったかは、紙面を見る限りでは明らかになっていません。

文化庁の個々の施策い対して、チェックを行うのは議員としての当然の役目ですから、作品の内容をチェックして補助金の使われ方が適切であったか否かを述べるのは政治的圧力といわれるのであれば、政府による文化支援など行えないのではないかと思ってしまいます。

ともあれ、これらの背景にあるのは右だの左だのと言われる、いわゆる保守VS革新という対立が軸になっているわけですが、実体験としてなかなかその実態を目の当たりにすることはないでしょう。おかしな反戦運動を臆面もなく展開しているのがいわゆる左翼であり、軍歌を大音量で流しながら街宣車で走ってるのが右翼です、というわかりやすいイメージはあっても、まともな社会人なら、そんなことをやってる暇があったら仕事しろ、と思ってしまいます。

最近の大阪や京都で盛んに報道されるようになってきた、公務員による組合である自治労や、部落民の反差別を旗印にする部落開放同盟などが、自治体をのっとり、不当な収入を得てきたりしている実態があきらかになってきて、「あー。左翼のシノギってこうだったのか」とようやくわかってきましたが、その一方で、右翼のシノギってどうなの?という疑問もあります。

街宣車に乗ってるような人たちは、一見やくざ風な物言いをするので、暴力団みたいなことをして収入を得ているように思ってましたが、そもそも、暴力に訴えて金品を得るのであれば、愛国心だの、天皇陛下万歳だのと理屈をこねないでストレートに脅せばいいんじゃないか、と思います。そんな疑問にようやく答えらしきものを得たのがこの「アメリカから来たスパイたち 」という本でした。

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アメリカから来たスパイたち アメリカから来たスパイたち (祥伝社文庫 (お17-1)) (文庫) 大野 達三

出版社 / 著者からの内容紹介日本はどう支配され続けてきたのか?政財界から特務機関まで組み込んだ、対日工作の全貌1945年8月、マッカーサーとともに米国のスパイ組織は堂々と上陸してきた。2年後、悪名高いCIAも密かに活動を始めた。下山事件や鹿地(かじ)事件など、戦後「黒い霧」と呼ばれ真相が闇(やみ)に葬(ほうむ)られた謀略事件に、CIAはいかに関わっていたのか? また彼らは日本の政財界をどのようにして操(あやつ)ったのか? 平成の今こそ検証すべき戦後日本の真相を暴く名著、待望の復刊!

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結論から言うと、戦後、様々な諜報を行ってきた特務機関があったわけですが、アメリカによる占領により、これらの日本人諜報員や機関はCIAに協力させられるようになりました。その中の一人が児玉誉士夫。彼は戦中に培った人脈とCIAの資金を利用し、多くの暴力団団体を吸収し、右翼的思想を支柱として、工作を行う実務部隊を組織しました。それが、今なお残る右翼団体というわけです。

児玉自身はロッキード事件で起訴され、判決を待たずに脳卒中でこの世を去りましたが、それらの末裔が今の右翼団体に連なっているようです。

思想としての保守、リベラルについてはどちらの意見にも耳を傾けるべきところは大きいと思いますが、それが運動体として、組織防衛や、組織拡大を図る過程には生臭いものが多く、辟易してしまいます。

ただし、戦後の歴史を振り返るまでもなく、この輪郭の曖昧な思想が旗印となり、運動体の連帯に一役買っていることも事実です。学校で習う歴史の中に近代が欠けていることから、これらを体系的に学び、知識の素養として政治や社会を語るということはなかなか難しいのですが、下山事件を初め、連合赤軍事件など、ちらちらと見え隠れする事件を振り返り、その伏流にあるものはなんなのか、というものを少しづつでも掘り返していかなくてはならないだろうと思います。



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