2008年4月2日水曜日

ブラックボックス

光市母子殺害 広島弁護士会も7弁護士懲戒せず
【産経ニュース】2008/4/2
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080402/trl0804021430002-n1.htm

 山口県光市の母子殺害事件で、被告の元少年の弁護団を構成する各弁護士が「意図的に裁判を遅らせている」などとして大量の懲戒処分請求が出された問題で、広島弁護士会は2日までに、所属弁護士7人を懲戒処分しないことを決定した。

 懲戒請求された弁護士の1人によると、弁護士の品位を害する非行に当たらないとされた。
 大量の処分請求は、橋下徹大阪府知事が昨年テレビで呼び掛けたのがきっかけとされ、インターネット上に各弁護士会に懲戒を求める書面のフォームが出回った。


 この問題では、東京弁護士会や大阪、仙台弁護士会も処分しないことを既に決定している。

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懲戒の数が多いからといって、むやみに懲戒するべきではないとは思いますが、これだけ大きな反響を受けながら、棄却した理由について説明もないというのはどういう組織なのかと訝しく思います。

弁護士自治を掲げられるのは、一重に弁護士会に品格を重んじ、自浄作用を持っているということを世間が認めているから成り立つのであって、それを盾に、まるで既得権益かのように身内を守るような姿勢であれば、社会から非難を受けるのを逃れることはできません。

懲戒制度とは以下のとおりです。

日本弁護士連合会
http://www.nichibenren.or.jp/ja/autonomy/tyoukai.html

弁護士および弁護士法人(以下「弁護士等」といいます。)は、弁護士法や所属弁護士会・日弁連の会則に違反したり、所属弁護士会の秩序・信用を害したり、その他職務の内外を問わず「品位を失うべき非行」があったときに、懲戒を受けます(弁護士法56条)。

懲戒は、基本的にその弁護士等の所属弁護士会が、懲戒委員会の議決に基づいて行います。
弁護士に対する懲戒の種類は、次の4つです(同法57条1項)。


戒告(弁護士に反省を求め、戒める処分です)

2年以内の業務停止(弁護士業務を行うことを禁止する処分です)

退会命令(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動はできなくなりますが、弁護士となる資格は失いません)

除名(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動ができなくなるだけでなく、3年間は弁護士となる資格も失います)


私は、光市事件において、安田弁護士の態度というのは、必ずしも「懲戒事由として疑いの余地はない」と思っているわけではありません。しかしながら、その弁護士としての姿勢は絶対に誉められるようなものではないと思います。仮に、弁護士会の懲罰委員会がきちんと審議した内容を公開した上で、棄却し、その議論に一定の納得できる内容であるならば、?マーク付きであっても、弁護士会のなかでの自治が健全であるかどうかを計る指標になりますが、安田弁護士の行っている弁護手法に少なくとも多くの人が疑問を持っていることに対して、きちんと相対しないのであれば、弁護士や司法に対する失望は小さくないでしょう。

被告の利益を代弁するのが弁護士の仕事だとは思いますが、許しがたい犯罪者の弁護をしている弁護士が数多くいるなかで、これだけの非難を浴びている弁護士がいるのでしょうか。「これでも品位を欠かない」というのであれば、弁護士に必要な品位とは、一般の人が思っているよりずっと低い水準でも勤まるものなのでしょうね、としか思えません。

弁護手法もさることながら、最高裁の弁論日程を一方的にキャンセルしたこともありますし、別件の松本 智津夫裁判では、控訴趣意書を提出しなかったために、3審制であったはずの裁判を1審判決で確定させてしまうという信じられないことをやっています。

この弁護士にしてこの弁護士会あり、みたいにこのまま流れていってしまうのでしょうか。

こういう人権派を気取る弁護士のおかげで、世論は厳罰化を望み、また、市民の声が届かないという理由で裁判員制度がスタートしてしまうのかと思うと、司法全体の機能不全を感じずにはいられません。


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