2008年3月1日土曜日

赤字は控えめに

【石原都知事会見詳報】(2)新銀行東京問題「取るべき責任は取りますよ」
【産経ニュース】2008.2.29 22:53
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/080229/lcl0802292143006-n1.htm


 --新銀行東京の再建計画では従来のような無担保の融資路線から転換しており、信金などと業務が重なる部分も多い。引き続き、新銀行でしか救えない層というのはあるのか

 「と、思いますよ。それを行うためにもね、もうちょっと体力つけないとね。パートナーも定めて、今まで新銀行で発想できなかった業務展開をしませんとね。今言ったみたいに非常に際どい融資ってのはできなくなると思います。そのままで続けていったら、風邪ひいてへたることは目に見えているわけですから。この1年間、私も苦労しましたが、いろんな人の意見を聞いてきましたけども、特にね、外資のファンドってのは東京の可能性をものすごく認めているんですよ。なんでこういうことしないんだろうか、われわれならば(こうする)、というのはあちこち聞こえました。日本側にもそういうのありました。ただやっぱり、日本の金融関係者は、そこまで物を見てない気がしましたね」

 「そういうものを斟酌(しんしゃく)してね、もっと幅の広い業務展開していかないと、結局また先細りにしかならない。これはね、ぜんぜん違う発想で、もちろん今のスタッフではできません。当然です。今はつなぎのリリーフピッチャーが頑張ってるわけだから。これから先ですね、スタッフも発想も替えてやりませんとね。際どい融資、とても危険でできませんし。そういう点で発想だけじゃなしに、実際にエグゼクティブ(行政的)な業務ってものを思い切って変えていかないとダメだと思う。そのためのノウハウ、随分仕入れました」

 --体力をつけている間の中小企業への支援は

 「さあ、これから新しい経営陣が他の業務の展開の予測も含めて斟酌していくことでしょう」

 --回復後の具体的な展望は

 「1万3000社に融資している。過去にも9000社の人が助かっている。(新銀行は)その他の融資で失敗したわけですね。日本の中小企業そのものが非常に恵まれてませんし。代議士時代の自分の選挙区である品川区、大田区というのは、中小企業のメッカというか、そこで見ててもね、景気が良くなってもあったかい風は最後にしか吹いてこない。景気が悪くなったら最初に冷たい風が吹いてくる。大手の孫請けのその下のさらに孫請けやっているような所はね、冬でもシャワーも出ないしね、水で体ふいて帰れ、みたいな。かといってね、大手の持っている社員寮とかそんなもの使わせるかっていったら、使わせないですよ、組合が反対して」

 「下請けってものの契約をね、ある程度監督するみたいな機関が通産省にあってね、なんていうんでしょうね、契約Gメンっていうんでしょうかね、そこに提訴するとね、非常に理不尽な、下請けの単価の値切り方が許されないような機構を作るべきだと言ったら、社会党よりおまえ左だって怒られましたよ。問題にされなかった。そういう体験がありますからね。しかもそれが、日本の基盤産業として日本の経済全体を支えているわけです」「私の友人で2人で夫婦でやっている会社があって、この人はね、物削る名人ですよ。『2人で何削ってるんですか』ってある時、聞いたら、原子炉の軸ですよ、1番大事な。そういう人たちをないがしろにできないでしょう。そういうものへの手当てとか認識というのは国はないね。だから私、知事になってやりだしたんですけどね。日本の中小、零細企業のポテンシャル、底力というものをもうちょっと国も国民も知った方がいいと思います。そういう人たちに対する手当っていうのは、この銀行を作った眼目ですから」

 --制度融資などで救えない層が依然としてあり、そこを銀行が救っていく

 「そうですね、そうしたいと思います。ただやっぱり、やけどしてまですることないですね。慈善事業じゃないんだから。その見極めをする必要があるし、それが金融する人間のプロフェッショナルってところだ。それをないがしろにして、貸し出し先数を増やすことで、質も考えずに量的な融資をしたからこんなことになったんでね。刻々ね、報告が上がってきますけども、おそらく質問に出るでしょうけど、予算特別委員会が開かれるまではね、最終的な(内部調査の)報告を議会に伝えましてね、先のことも考えていただきたいと思います」

 --追加出資400億円の根拠は何なのか。

 「これから議会でその質問が出ますからね。必要だったら予算特別委員会を傍聴してそこで取材してください。ここで申し上げる前に、議会でその討論する前に、ここで説明しきるだけのスタッフもここにない。予算委で取材してください」

 --現経営陣を刷新するタイミングは

 「さあ、これは銀行の当事者とも話し合いましてね。セカンドステージの展開が、要するに具体的に決まった段階でと思います。それはできるだけ急がないといけないと思ってます」

--職員が経営陣には入ることは

 「ありませんね」

 --都職員ではやりきれないのか

 「そうです」

 --事業清算、破綻(はたん)処理について都民に負担をかけると言っているが、具体的な影響額、検討、試算はあったのか

 「あります。それで、非常に膨大な数字になるという認識でね。やっぱり400億円の追加出資はセカンドベスト、これしかないだろうということで議会にお願いした」

 --都民への説明の材料にすることは

 「あります。議会を通じてしますから。さらにあなたがた、それを報道してくれればいい」
 --今この場では

 「それはできません。これから議会の討論があるわけですから。議会ってのも最優先しないといけないでしょう。あなたがた別に熟知しているかもしれないが都民の代表じゃない。都の正式な代表として選ばれたのは議員ですから。それが構成する議会で決まります。都民も了承してくれるでしょう」

--新銀行の責任について知事は「もろもろ」と発言しているが、もろもろというのは

 「だからこの問題のね、要するにストラクチャーってものをあなたも認識した上でね、質問なさっていただきたい。今は(新銀行の内部調査の)最終報告を待っているわけですからね。それが明かされれば、どの部分のどこにどういう人間のどういう責任があるか、つまびらかにされるでしょう。それで、それぞれの責任を追及されるべきでね。私これやっぱり、発想した人間としては、責任を痛感してますけども、最終報告を聞いてどこにどういう瑕瑾(かきん)があってどういう結果を得たかをつまびらかにしなければ、具体的な責任論にならないんじゃないですか。世の中この銀行を「石原銀行」と言われるからね、頭取の石原に責任があるって言われるが、それは皮相な物のくくり方でね。しかし私は、取るべき責任は取るつもりでいますよ。どういう形で取るか、奈辺に問題があって、それがどうこういう事態になったかということを詳細にみなさんにわかっていただき、私も承知しなければ今後の処理だってでききれないでしょ。今この段階でそういうことをするのは、非常に皮相な質問でしかない」

 --答えていただきたい

 「答えません。議会があるんですから。だからあなた、議会傍聴にいらっしゃい。こういう席で記者として何でもかんでも聞けると思ったら、とんでもない間違いだ」

 --内部調査の最終報告はいつごろまでに

 「予算特別委員会までに必ず出させます」

 --どういう形での公表が適当か

 「議会と相談して、銀行とも相談して、ちょっと今ここでは申せません。いずれにしろ、詳細が議会を通じてみなさんにわかるようにします」

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 財政再建が緊急課題となっている大阪に比べ、一応の財政再建を成し遂げた石原都政なので、多少の無駄遣いは大目に見ようという気持ちの自分がいます。

 都民としては、新銀行東京が赤字であっても、その金は日本の経済を支えている中小の零細企業なわけですから、不景気、デフレ経済というインフルエンザのような状態の中で、体力のない者は全部死ね、というわけにはいきません。東京都としては財政出動のような文脈でとらえれば、単なる無駄遣いとはいえないと思います。もちろん不適切な融資があったのなら、当然糾弾されるべきですが。

 都民の生活を考えれば、地方交付税でさんざん都民を冷遇したあげく、地方税にまで手を突っ込んで、さらに都民の財布から金をばら撒こうという話が国政レベルですすんでいるわけですから、「ふるさと納税」なんていう馬鹿馬鹿しい制度のほうが深刻な問題であると言えます。

 とはいうものの、支店を統合し、職員を減らした上で追加融資するという今回の案にどういう先行きがあるのかと言えば、非常に不透明なのも確かで、この点においては都議会での石原知事の説明にも注目が集まります。

 そもそも、護送船団方式に慣れ親しみ、土地を担保にする融資を乱発した挙句にバブルで自滅した従来の銀行のアンチテーゼとして生まれた銀行なので、本来の趣旨に沿った上で収益が上がればこれにこしたことはありません。

 東京都を中心とした首都圏は人口でも、域内総生産でも、2位のニューヨークを大きく越えた世界最大の都市なので、その地位に応じたチャレンジは進めていって欲しいと思います。

 でも、あんまり赤字は出さないでね。




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