【溶けゆく日本人】蔓延するミーイズム(7)疲弊する医療現場
【産経ニュース】2008.2.13 08:04
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/080213/sty0802130804004-n1.htm
■権利を名乗る身勝手
昨年末、東京都内の病院に勤める産婦人科医(38)は、繋留(けいりゅう)流産で手術日を決めたばかりの患者(35)からの電話に一瞬、返す言葉を失った。
「昨日決めた手術日ですけど、仕事の都合がつかないので変えてください」
繋留流産とは、胎児に異常があって育たず、お腹の中で死んでしまうこと。そのままにしておくと、出血したり細菌感染しやすいので、死んだ胎児を子宮から取り除く手術をしなければならない。緊急手術が必要なほど切迫した状態ではないが、患者の体のためにはなるべく早く手術をした方がいい。
年末ということで、手術の予定がかなり立て込んでいた。それでも幸い翌日に空きがあったので翌日の手術を提案したが断られ、1週間後に決めた。もちろん患者もそのとき「この日なら大丈夫」と承諾、スタッフの手配もすませたところだった。
患者は大手企業に勤める会社員。確かに年末は仕事が忙しいとはいえ、それを承知で手術日を決めたはずだった。
「絶対に(手術日は)変えられないんですか」と食い下がる患者に、産科医が「すべての患者さんの手術日程を変えないと無理です」とこたえたところ、「じゃあ、そうしてください」との言葉が返ってきた。
もちろん、すべての患者の手術日程を変えられるわけがない。また、年明け後なら新たに手術日が組めるが、それでは患者の体が心配だ。産科医が改めて「つまり、手術日を変えるのは不可能ということです」とはっきり告げると、「それなら別の病院で手術するからいいです」と、電話をたたききられた。
この患者は他の病院を数カ所あたったものの、手術を引き受けてくれる病院がなかったことから、結局、この産科医のいる病院で当初決めた日程で手術を行った。
産科医はいう。
「結果としては無事手術できてよかったのですが、診察や治療以外の対応にこちらはへとへとです。産科医不足がいわれ、実際にみなぎりぎりの状態で仕事をしているのに、わがままな患者に振り回されると、もうやってられないという感じです」
◆◇◆
都内の別の病院に勤務する産科医(35)も、患者の理不尽な要求にとまどっている。
1月半ばのことだ。切迫早産で入院していた40代後半の妊婦から、「外出を許可してほしい」と呼び出された。輸入品を扱う店を経営しており、店のことが気になって外出したいのだという。
この患者は、長年の不妊治療の末にようやく初めての子供を妊娠したのだ。このときは38週で、絶対安静が必要な状態だった。産科医が「子供の命のために、もう少しだけがまんしてください」と説明しても、「私の体のことは私が一番よく分かっている」と、がんとして聞かない。患者の夫に説得してもらおうと「今が一番大事な時期ですから」と説明したが、夫も「妻の言うとおりにしてあげてください」と言うだけ。
外出されると治療に対する責任がもてなくなることから、「外出したいなら自己退院してもらうしかありません。その代わり、もううちでは診察できません」と告げると、「退院するつもりはない」と言い張り、日中に勝手に外出し、夕方戻ってくるという生活を続けた。
「子供が本当にほしいから不妊治療をしていたのではないのでしょうか。生まれてくる子供のために、数週間仕事を休むことが、そんなに難しいのでしょうか」と産科医は頭を抱える。命と仕事の重さの違いすら、分からなくなっているのだ。
(後略)
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川上未映子の「乳と卵」を読みました。
こういうものに賞をやるから文学が衰退していくのだろうなと思いました。
純文学という作法に拘泥するあまり、その文法を知らない人からすると、なんでこんな回り道をするような文章を書くのか不思議でならないのですが、そうすることで、文壇みたいな閉鎖的な構造を保持しようとしているのでしょう。そんなややこしい手法を使わなくても、良い小説はいっぱいあるのに。
もうひとつが、時代の移り変わりです。
舞台が東京であるにもかかわらず、銭湯であったり、近所の汚い中華料理屋だったりと、まるで「70年代の小説です。」といっても差し支えないくらいの風景描写です。登場人物は電車に乗ってやってくるわけですが、この描写を見る限り、絶対Suicaなんか使っていないんだろうな、と思わせる空気がありました。
なんで、「乳と卵」のことを持ち出したかというと、純文学と我々の生活の間にある隔たりは、ひとつには先に述べた、文壇とよばれる、出版業界を取り巻く事情の閉鎖性もある、と思うのですが、もうひとつは、現代という時代が、あまり心象風景を語るのにマッチしていないように思います。
今も、昔も、人は恋をし、病気にかかり、誰かと別れを告げ、誰かの死を見送る。そういうことはいつの時代も変わらないはずで、そういうことに直面した人間の心の移り変わりが文学であると思うのですが、そういう風景が「六本木ヒルズで」とか、「とっておきのスイーツが」とか「無線LANの不調により」とか、「googleで調べたら」とかというものと、いまいちマッチしない。
安易に手に入れたものよりも、苦労して手に入れたもののほうに愛着を感じたりするのが人間だと思いますが、そういう過程にこそ、心情の変化があったり、そこに人柄を見出したり、具体的なイメージが鮮明になったりします。
「乳と卵」で言えば、普通なら、ググればすぐ終わるはずなのに、豊胸手術のためのパンフレットの山をわざわざ東京まで持ってくる登場人物の行動にこそ、そのキャラクターを位置付ける何かが生まれるのです。
Michael Crichton は、"Lost World"の中で、「文明が発達したとして、何がおきたのか。自動洗濯機や食器洗い機、様々な機械が発明され、便利になったというが、そういう現代人であっても、毎朝早くに起きて仕事をし、夜遅くまで家事をするというのは産業革命前の生活と変わらない。科学が進化したところで、人間の生活はまったく楽になっていない」ということを書いていました。
携帯電話が生まれてから、他人の時間の流れにゆだねることが多くなっています。また、ニーズの多様化、サービスの多様化、それを換金して消費する文化というものが確実に世の中にあって、それが加速しているようにも感じます。
時計の針を戻すことはできませんし、純文学の中の世界が素晴らしいとも思いませんが、調子が悪いから病院に行き、手術が必要と言われたから日取りを決め、別の仕事が入ったから、手術を伸ばし、と入ってくる情報に右往左往するような人というのには滑稽さを感じますし、他人を巻き込んでそれを押し通そうとする人には、やさしさがありません。
やさしさとはイマジネーションです。周りの人の苦労に思いを致し、感謝とねぎらいをわすれないようにしていきたいと思います。
2008年2月16日土曜日
お蔭様。
2008年2月4日月曜日
死者の声に耳を傾ける
再鑑定も外傷性ショック 力士急死事件、捜査大詰め
【asahi.com】2008年02月04日15時00分
http://www.asahi.com/national/update/0204/NGY200802040002.html
大相撲・時津風部屋の序ノ口力士斉藤俊さん(当時17)=しこ名・時太山=が昨年の名古屋場所前の6月、愛知県犬山市でけいこ後に急死した事件で、死因を再鑑定した名古屋大が「多発外傷による外傷性ショック」との結論を県警に伝えていたことが4日、わかった。当時の時津風親方=元小結双津竜、本名・山本順一(57)=と兄弟子による暴行が死に結びついたことを改めて裏付ける内容で、傷害致死容疑での強制捜査に向けて最終局面に入った。
調べでは、昨年6月25日、部屋を脱走した斉藤さんに昼ごろから兄弟子が暴行。さらに、前親方が夕食の席で額をビール瓶で殴ったのをきっかけに兄弟子3人が宿舎裏などで殴る、けるの暴行を加えたとされる。翌26日も兄弟子4人が土俵上でぶつかりげいこの名目で暴行したとされる。
最初の新潟大も「外傷性ショック死」と鑑定していたが、死亡前日と当日に受けた暴行のいずれが死に結びついたかが特定されなかった。このため県警は昨年11月、死因について名大に再鑑定を依頼していた。
県警は、遺体の血液から致死量のカリウムが検出されていたことに注目。筋肉が強い衝撃を受けると血中へ流出、一定時間を経て心停止を引き起こすとされる。半日以上経過した内出血が多かったこととあわせ、県警は死亡前日の暴行が死を引き起こした可能性が高いとみていた。名大の再鑑定でもこの見方を裏付ける結果が出た模様だ。
県警は26日の暴行もけいこの範囲を超えており、追い打ちになったとみている。一連の暴行に加わった前親方と兄弟子らは関与の度合いに濃淡があり、県警は強制捜査とする範囲を名古屋地検と最終協議している。
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まもなく上映開始となる「チームバチスタの栄光」。著者であり、医師である海堂尊氏は、死亡時医学検索の重要性を一貫したテーマとして、その著書の中で訴えつづけています。
監察医制度が大都市にしく、死亡しても解剖されるケースは非常にまれです。
今回の時津風部屋の事件は悪質なにおいがしますが、通常では、多少不審な点があっても、解剖せずに済ませてしまうことが多いようです。
犯罪によって死亡した被害者の捜査のための解剖というのも重要ですが、通常のいわゆる病死であっても、医学の発展のためには時として、解剖が必要なケースもあるのではないか、と素人ながらに想像しますが、地方自治体のうち、半数が解剖のための予算が100万以下で、山口県に至っては予算ゼロだそうです。
海堂尊氏は、解剖を今より積極的に行っていくことを求める一方で、AI(オートプシー・イメージング)というMRIやレントゲンをフル活用した検索手段を義務付けるべきだ、と主張しています。
遺体を損壊する解剖を厭う遺族がいるのはもちろんだと思いますが、もう少しうまく折り合いをつける手段を模索していかないと、遺族にとっても、大切な人がなぜ死んだのかわからない、というのも不幸なことだと思います。
具体的な実態は、海堂尊氏の「死因不明社会」をお勧めします。また、死体の発見から検死、解剖にいたるまでの解剖行政の矛盾を面白く描いた短編が「このミステリーがすごい2008」に掲載されています。
興味がある方に、ぜひオススメします。
2008年1月10日木曜日
今、そこにある危機
中国で初、人から人への感染確認 鳥インフルエンザ
http://www.asahi.com/international/update/0110/TKY200801100321.html
【Asahi.com】 2008年01月10日20時16分
中国・南京市の父子が鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染した問題について、中国衛生省の報道官は10日の定例会見で、死亡した息子から父親への感染を確認したと発表した。中国で人から人への感染が確認されたのは初めて。ウイルスが「新型」に変異すると大流行する恐れがあるが、「遺伝子の変異はない」としている。
父親は完治しており、父子と接触があった約80人からは異常が見つかっていないという。ただ、死
亡した息子への感染ルートはまだ確認できていない。報道官は「冬から春にかけて鳥インフルエンザが多発する恐れがあり、予防対策を徹底していく」と述べた。
オランダやベトナムなどで鳥インフルエンザの人から人への感染が確認されている。ウイルスが人から人への感染力が高い新型インフルエンザになると、世界的に流行する可能性がある。
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世界を襲う恐れのある、最も恐ろしい惨事とは、どんなものでしょうか。
惨事を図るのに、継続的なものや、将来に渡って影響を及ぼすものなど、種類は様々ですが、シンプルに比較するために評価軸を死者数として見ていきたい思います。
まずは自然災害から。
〈地震〉
阪神淡路大震災(1995) 6434名
関東大震災(1923) 105385名(行方不明含む)
〈津波〉
スマトラ島沖地震による津波 22万人
〈火山噴火〉
ネバド・デル・ルイス山 コロンビア(1985)21500名
プレー山 西インド諸島(1902) 32000名
続いて人災。
チェルノブイリ原発事故(1986) 31名(←ソビエト発表)
広島原爆投下(1945) 14万人(~1945/12)
長崎原爆投下(1945) 73884名(~1945/12)
アウシュビッツ(~1945) 100万~400万人
第一次世界大戦 1000万人(行方不明含め、1800万人)
第二次世界大戦 8200万人
と、言われております。
今回、テーマに上げたい疫病についてですが、直近のパンデミックでいうと
スペイン風邪(1918-1919) 4000万~1億人
第二次世界大戦全体の死亡者数に匹敵するくらいの被害がでています。
スペイン風邪といえば、インフルエンザの一種なわけですが、分類で言うとこのスペイン風邪ですら、「弱毒性インフルエンザ」に分類されるそうです。これよりも恐ろしいものが、高病原性鳥インフルエンザ「H5N1」だそうです。
「H5N1」と呼ばれるインフルエンザウイルスは、現在最もパンデミックに近い病原体と呼ばれ、WHOでは何年も前から注意を呼びかけています。現在、これが大発生すると少ない予測で200万人。一説には億を超える人々が死に至るとされています。
これが、なぜまだ、大発生にいたらないかというと、一番の障壁となっているのが、種の違いです。鳥インフルエンザは、その名の通り、鳥が罹患するものです。これが鳥に感染しているだけならよかったのですが、ウイルスが進化するにつれ、人間にも罹患し、ウイルスを繁殖させるようになりました。これが鳥→ヒト感染です。
ウイルスの進化は確実にヒトへと向かっていて、鳥→ヒト感染は、感染源となる鳥を隔離(まあ殺してしまうわけですが)で防ぐことができます。1997年の香港での鳥インフルエンザ死者発生の時期には、時の香港行政官が、香港島のすべての鶏の流通を止め、全頭を処分することでパンデミックを防ぐことに成功しました。
しかし、次の恐怖は鳥インフルエンザのヒト→ヒト感染です。これは全頭処分というわけにはいかず、また、移動手段の多様化により、世界中に多くのヒトが往来するようになった今日、ヒト→ヒト感染が初期段階で隔離できなければ、世界規模でにパンデミックが発生してしまいます。
鳥インフルエンザの恐怖は、元来、人間には感染するはずの無いウイルスのため、免疫がまったくありません。つまり、現在、鳥インフルエンザに有効なワクチンはないわけで(比較的有効というものはありますが)、パンデミックが発生すれば、初期段階で日本の医療制度であっても、崩壊します。
そこで、このニュースなわけです。
ヒト→ヒト感染が確認されたわけですが、問題は、過去も疑わしい症例が中国で確認されているにもかかわらず、ウイルスサンプルを中国政府はWHOに提出しようとしません。ウイルスサンプルがあり、それを研究すれば少しでも早くワクチンを作成することができ、それによりはかりしれない数の人々が助かるかもしれないのに。
こんなところで人類の祭典であるオリンピックを行おうというのですから、狂気の沙汰としか言いようがありません。
日本を始め、世界は、オリンピックを中止にする覚悟で中国側にデータを要求するべきでしょう。
そうでなくても、人命、人権軽視でベルリン五輪以来のプロパガンダである、北京オリンピックなんてボイコットするべきだと思いますが。
P.S. 日本では「タミフル」というインフルエンザの薬が「異常行動を引き起こす恐れがある」というマスコミの煽りを食らって、危険な薬のレッテルを貼られています。
もちろん、それは厚生労働省の密室談合主義など、国民に十分な説明をせずに推し進めようとする不作為の大罪があるわけですが、現在、実行性のあるインフルエンザ封じ込め対策の最大のものがこのタミフルの備蓄です。
品川区では「区民の人命はなんとしても守る」というスローガンのもと、独自のタミフル備蓄に踏み切りました。
鳥インフルエンザの危険性などは、あまりマスコミも報道しませんが、新聞の記事の大きさ、が国民の優先順位とイコールではありません。タミフルの備蓄および、鳥インフルエンザ対策の重要性をぜひ知らせていきたいと思います。
パンデミックが起こってからでは対策のしようがありませんから。
参考文献国立感染症研究所http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
「H5N1」岡田春恵著
(国立感染症研究所の研究員の方です。小説仕立てになっています。文章が上手とは思いませんが、鳥インフルエンザの危険性が十分に表現されています。ここには書いていませんが、各国のインフルエンザへの対策と、日本の無策ぶりが書いてあります。ちなみにブッシュ政権下のホワイトハウスのホームページでは、「テロとの戦い」と同列で「鳥インフルエンザ対策」が書いてあるそうです。 )
